日経新聞2021.1.7夕刊のコラム・「プロムナード」より。
小説家の小谷田奈月氏が「“自分らしさ”の罠」と題して、自身の経験を下記のように語っている。
「私らしく生きよう!」と答えが出た(ように見える)人には、何も忠告しないし、本人も答えが出たと思っているから警戒せずに突き進む。落ちて初めてその路線にも穴があったことを知るのだ。
そして、ある小説の執筆にてこずり、書けなくなったとき、マイナス思考で埋め尽くされた。ただ道を歩いているだけで涙があふれた。
どんなにつらいかを誰かに聞いてもらうべきと、わかっていながらできなかった。
なぜなら、「書けない」「つらい」と誰かに打ち明けることは、私らしくなかったからだ。
「らしくない」状態に陥っている」自分を、私自身まだ受け入れることができていなかったのだ。自分で自分が信じられなかった。
古谷田氏は、その後、自分らしさを「うんとゆるやかにイメージする」ようにしているとしています。
この自分が決めた「自分らしさ」に縛られてしまうというのは、誰にでも起こりえると思います。
私たちは日々変化していますから、やりたいと思っていたことも「やる気が起きない」こともあるのです。
「自分がやりたいことと決めたから、つらいなんて言えない」とか、「これは自分らしくない」といったことに苦しんだときは、自分がつくった枠から出ることを意識して欲しいと思います。
「自分らしくない」自分を知っている人に見せたくなかったら、カウンセラーに話しをして、自分がつくった枠から出てみましょう。