日経新聞(2021.1.14朝刊)私の履歴書(辻惟雄⑬)より。
仕事について考える時、人の役にたつか、社会貢献できるかといったことを考えることは多いのではないでしょうか。
そのような思いを抱いた時、「人の役にたつ」とは、どのような基準から見たものなのか、自分自身で整理することが大切だと思います。
美術史家の辻惟雄氏のエピソードをご紹介します。
辻氏は、東京大学の理科Ⅱ類に入学後、文学部美術史科に転学部した学生のときに、お母様が病気で亡くなりました。
そのときに、「母を助けられたのは、医学しかなかったんだ」と強く思い、「今からでも遅くない。美術史学科をやめて、やっぱり医学部に行こう。」と決心してお父様に打ち明けます。
辻氏の気持ちを聞いて、お父様は「美術史が人の役に立たないとは思わん。」
「絵には人を慰める力があるんだ。私も絵に慰められているんだよ。」とおっしゃったそうです。
この言葉は、辻氏の進路に光を当ててくれたと書かれています。
世間を見渡すと、(できることなら)医者になって欲しいと願う親が多いですが、このような言葉をかけることができるのは、素敵なことだと思いました。
進路に迷っている本人に対して、悩んでいる部分に焦点を当てることの大切さを感じました。